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症例供覧

水平埋伏歯のあった場所・・・(臼歯枝の存在)

Q: このパノラマ像は、十河がポリクリの相互実習(5年次)で撮影されたパノラマ画像です。1本の太い下顎管が見えるだけで、他に特記すべき事項はありませんでした。 先生方は左側下顎の7番の後方部分に何か見えるでしょうか?

 

 ちょうどパントモ撮影の2年ほど前(学生3年次)に、先輩の先生によって同部の水平埋伏智歯を抜歯してもらっていたため8番はありません。

 また、近心の7番には歯冠補綴が行なわれていない(紺屋の白袴状態でした。今では同歯は抜歯されています:恥)ポストコアの支台歯が、近心傾斜している様が確認されます。

 

 

 

 

 

A:パノラマでは全く分かりませんが、下顎骨の後方からCT画像の連続断面を見てみると、下顎管の上側が涙滴状に伸びてゆき、分裂をはじめ、下顎管が2本になっていく様がわかります。

 

CT画像

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

押さえどころ

1.臼歯部でも下顎管から分岐をした枝「臼歯枝」があり、CT画像ではじめて確認できることがある。

2.「パノラマでは何も見えない!」からといって、「そこには何もない!」という訳ではない。

3.主たる下顎管が上側の場合は気をつける!

ボトム

 

解説

3D画像 左のパノラマ画像を見ると、明確な下顎管の分岐は見えません(恐らくCT画像と対比すると、黄色の丸で囲まれたあたりに「臼歯枝」が見えるはずです)。

 この部位は歯列から離れているので、通常、インプラントの埋入は行なわれずドリリングによる麻痺を心配する必要はないでしょう。しかし、ドナーサイトとして骨移植のブロック骨を採取する場合には「臼歯枝」への配慮が必要です。

 本章で十河が最もポイントにしたいことは、「パントモでは何も見えない」からといって「そこには何も存在しない」とは限らないことです。

 もう少し話を発展したいと思います。

 以前の症例供覧の「オトガイ孔はどこにある?」でも申し上げましたが、パノラマにおける下顎管の読影は管構造のわかりやすい後方から確認するとわかりやすいと思います。 このパノラマの場合と同じように、CT画像による下顎管の読影も後方の下顎孔付近からの確認をお勧めします。もちろん、見えるのであれば前方のオトガイ孔からの読影でも結構ですが、ポイントとなるのは画像の中で「下顎管の連続性」を見ることです。

 

1.主たる下顎管は上側?下側?

 こういった2本に分岐する下顎管においては、パノラマで見えている下顎管すなわち主たる下顎管がCT画像の上側か下側かをまず見極めてください。連続するCT断面を後方から追っていき、下顎管がどのようにオトガイ孔につながっていくのかを確認してください。

 今回の十河の下顎管の場合、かつて「水平埋伏智歯」の根尖へとつながっていた「臼歯枝」が残遺して見えていると考えられます。 そのため、後方から臼歯枝を追っていくと臼歯枝の管構造は消失していき、主たる下顎管はもう一方の下側であると判断できます。

 

2.上が主たる下顎管は危険!

 埋伏歯の位置から考えると、通常は上側に「臼歯枝」が多く、下側が「主たる下顎管」のことが多いかもしれません。しかし、確率的に考えず必ずCT画像を目で追って主たる下顎管を確認してください。

 もし実は上側が主たる下顎管であるにも関わらず、臼歯枝だと思って上側の下顎管にドリリングをしてしまうと(参照:【臨コメ】ドリルの回転数)、神経麻痺を起こします。また、骨移植のために頬棚部分の皮質骨をブロック状に採取するときに下顎管に触れてしまうと、同じく麻痺を誘発してしまいます。そのため、主たる下顎管が上側にある場合はインプラントの埋入や骨移植の治療計画の立案では注意をしてください。

 

3.中ノ島の場合もある

3D画像 また下顎管を追っていくと、途中で島状の骨が介在することもあるようです(左図)。

 金属アーティファクトで少し見づらいですが、黄色の丸や矢印で示すところに骨の「中ノ島」があります。この場合、主たる下顎管は上下両方ではないかと思います。

 
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