症例供覧

CT値で骨粗鬆症を診る


大阪府ご開業
山羽 徹先生のご厚意による

Q:右下6番7番の動揺が著しいため2本とも抜歯になった症例です。図1は初診時のパノラマですが、この画像を見て何かお気づきになる点はありますでしょうか?

 

初診時のパノラマ
 図1:初診時のパノラマで何か気づくことはあるでしょうか?
 

解説

A:患者さんはインプラント治療を希望したため抜歯3ヵ月後にCT撮影を行いました。歯列弓に沿ったCT断面(いわゆるカーブドMPR)にCT値の色付けを行いMischの分類で骨質を表すと、CT値が150HU以下の骨とはいえないD5が広範囲を占めていることがわかりました(図2)。もう一度パノラマを見直すと、確かに黒い透過像が認められます。辺縁の不明瞭な透過性を示す病変はパノラマではわかりにくいことが多いのですが、CTであれば一目瞭然です。オペ前に改めて患者さんに問診すると、「正直に言うとインプラントをしてもらえないと思い、骨粗鬆症でビスフォスフォネートを内服していることを言えなかった。」と聞き出すことができたそうです。

Mischの分類で骨質診断
 図2:Mischの分類で色づけしたカーブドMPR(2a)やアキシャル像(2b)で骨質診断
図3:近心傾斜により骨質の良い場所に埋入

 この症例について山羽先生からは、「実際のインプラント埋入では同部位の天然歯根の通常の傾斜方向とはせず、骨質が良い近心部分に意図的な傾斜埋入を行うことで問題のない初期固定が得られた。」とお聞きしています。

 
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