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症例供覧

パノラマの正中部に何か見えるか?(切歯管嚢胞?)

Q: 本画像は、右上1番のインプラント埋入のために撮影したパノラマです。欠損部の周囲を見ると、前歯部の歯根周辺全体になんとなく黒い影がみえます。しかし、「そんなものなのかな?」と思ってしまいます。先生方も「特に問題はない。」と思われて、インプラントの埋入手術に臨まれはしないでしょうか?

パノラマ画像
 図1:右側上顎1番のインプラントの1本埋入。前歯部全体の根尖付近が黒くみえるが、特に問題はなさそうに思える。(奈良県ご開業 立木靖種先生よりご提供)

 

A:しかしCT撮影をしてみると、切歯管の中央部に大きな丸い空洞が認められました。恐らく、切歯管嚢胞ではないかと思われます。

 そもそもパノラマ画像の前歯部は、体の後ろに脊椎があるためその影響を強く受けます。また、パノラマ装置には「断層厚」が存在し、断層厚の中に顎骨が映しこまれていないとボケてしまいます。前歯部は最も断層厚が薄く断層厚からが顎骨が外れやすい部位といえますので、脊椎と断層厚の影響を考えるとパノラマにおける前歯部の読影は結構難しい部位といえます。

全体画像

 

押さえどころ

・パノラマ画像の前歯部はわかりにくい。

・前歯部へのインプラントの埋入は、顎骨幅を把握するだけなく、詳細な顎骨形態を観察するために

 必ずCT撮影を行う。

ボトム

 本症例において、もし切歯管嚢胞の存在を知らないまま1番を埋入すると、突然ドリルの抵抗が無くなり、手術中恐らく焦ってしまうことでしょう。もちろんそうならないように、CTデータから切歯管や切歯管嚢胞に穿孔しない埋入位置を探ってください。

 また、隣在歯との近遠心的顎骨幅が狭いことから、どうしてもインプラント体がその位置にしか埋入できず、嚢胞腔へと穿孔することも考えられます。そのような場合、「事前にどのような器具や心構えを準備すべきでしょうか?」その答えは、次回の「臨コメ」で・・・。

 
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