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症例供覧

主訴は6番の違和感。7番では?


愛知県ご開業
竹内佐年先生のご厚意による
図1:主訴は右上6番の咬合痛

Q: 患者さんは右上6番の違和感を訴えて来院。 早速デンタルを撮影すると、6番はインレーの入った有髄歯(図1)。口腔内を見ても同歯にカリエスは無く、ポケットも全て4mm以下でほぼ正常でした。一方、同じデンタルで7番に目を移すと歯根の周りは骨吸収様の像を示し、プロービングでは口蓋側の3点とも8mm以上の深いポケットであったため違和感の原因歯は7番だと疑いました。

 さて、本当は患者さんのおっしゃるように6番が原因歯なのか、それとも7番が原因歯であるものの上顎の1本1本の歯の知覚は全て上顎神経に束ねられて脳に伝達するため、部位の特定が患者さんには難しいのか?その判断が難しいところです。そこで、歯科用CTで確認をしました。

 

解説

図2:7番の読影。7番の骨支持は頬側のみ。口蓋側は完全に浮いた状態。
図3:念のために6番も読影。すると3根いずれも根尖病変を歯科用CTで発見:驚。

 CT画像でまずは7番を読影してみましょう(図2)。ご覧のように右上7番を支えているのは頬側骨のみ(図2a)。口蓋根は完全に骨から浮いた状態のため「やはり違和感の原因は7番が濃厚だ。」と考えました。

 しかしせっかく歯科用CTの撮影をしているので6番も読影してみました。まずは口蓋根からです。すると6番の口蓋根根尖に丸い透過像が認められました(図3b,cの黄矢印):驚。続いて頬側根にMPR断面を移動してみると、近心根と遠心根の2根ともに根尖病変が認められました(図3eの橙矢印)。さらにMB根の周囲に目をやると、皮質骨が穿孔して開窓状態であることがわかりました(図3fの赤矢印)。また、図3dを見ても近心からの骨の連続性が同部で無くなっていることがわかります。以上のことから原因歯は7番ではなく、患者さんのおっしゃる通り6番であることがわかりました。

 今一度、デンタルを見直しても十河は全く読影ができません。6番は抜髄もされておらずまたカリエスもなくインレーが入っていることで、「根尖病変などはない!」と思い込んでいました。もちろん学生や研修医の頃であれば反対側の6番を比較対象にEPTを行い失活していることを確認したでしょうが、なかなか現実の臨床ではできません。

 本症例から、「デンタルでは根尖病変を把握できないことがあるのではないか?」という疑問が湧いてきました。そこで気持ちを改めて、デンタル撮影と根尖病変の論文を調べることにしました。その結果は、またのCT適塾でご説明します!

 
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