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症例供覧

4番の根尖病変はBu根? Pa根?


愛知県ご開業
竹内佐年先生のご厚意による
図1:左上4番の根尖病変。病変が頬側根か、口蓋根かわからない。
(愛知県ご開業 竹内佐年先生よりご提供)

Q: 左上4番のデンタルを見ると根尖病変が認められます。しかし、病変がデンタルに映る短い歯根の根尖を原因とするのか、長い歯根の側枝を原因とするのか分かりませんし、そもそも一枚のデンタルでは着目している根が頬側根なのか、口蓋根なのかもわかりません。先生方はこのデンタルをご覧になって、どうような診断をされるでしょうか?

 

A:教科書的にいうならば、まず根尖病変が頬側根か口蓋根かを確認するために、デンタルを偏心位でもう1枚撮影するというも先生いらっしゃると思います。そしてその原因根の感染根管治療が行われ、十河もこれまではそうしていたに違いありません。しかし、2012年4月から保険適応になった歯科用CTが臨床の中に入ってくると、もっともっと診断能力が向上します。次の解説で詳細にお話ししたいと思います。

 

 

 

 

 

 

解説

 これまで十河は、CT撮影はインプラント治療の術前診断に最も有効であると思ってきました。しかし、最近になって歯科用CTを臨床に応用していくと、インプラント治療はもちろんのこと、それ以上にエンドやペリオなどの一般診療に歯科用CTが極めて有効な診断法であることがわかってきました。

 

■ 根尖病変の大きさを確認:
 図2a、bをご覧ください。近遠心方向に切った頬側根のMPR像を診ると(図2a)、図1のデンタルと同じように遠心に少し傾いた根尖病変が明らかに認められます。まさに頬側根が、デンタルで認められた根尖病変であると確認できました。

 続いて図2bの口蓋根の近遠心断面をご覧ください。なんとこの口蓋根の根尖にも比較的大きな病変が認められます。もう一度デンタルを見直すと確かにもう1つの根尖にも病変が確認できました。しかし、上顎洞底の白線とかぶったり、また少し斜めにデンタルが撮影されてしまうと、根尖病変がわからないことも多いように思います。このような診断能力の高さが、まさに歯科用CTの強みといえます。

 

■ 頬舌側断面:
 さらに頬舌側方向にカットされたMPR像を診ると(図2c)、なんと頬側根の根尖が骨から突き出していることがわかります。もちろんエンドを専門としている先生であれば、デンタルを診たとたんに根尖部の歯肉の触診を行い根尖の開窓状態をチェックされることでしょう。しかし、十河のような臨床の未熟者であれば触診を行わず、すぐに感染根管処置に入ってしまいます。そして、このような大きな病変という状況把握をせずに根治をし続け、結果、何ヶ月も根治を長引かしてしまうかもしれません。

 

 このように平面で表現されるデンタルとは異なり、頬側根、口蓋根とも根尖病変があり、さらに頬側根が重篤な状態であることを瞬時に立体的に診断できる点で、歯科用CTは非常に有効といえます。

 

注) 根尖病変の大きさとデンタルへの映り込みについては、次回「根尖病変とデンタルについて」をお話する予定です。

 
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