ホーム » CTの基礎 » 空間分解能・スライス厚 » 寸法誤差につながる「部分体積効果」

CTの基礎

寸法誤差につながる「部分体積効果」

ここがポイント

「部分体積効果」はCTの誤差となり、骨では膨張方向(プラス方向)に誤差が出る。

ボトム

 前頁の「撮影スライス厚 1.25mm vs 2.5mm」の実験の際、ゴジラと同時に工業用セラミック球を撮影しました。CT撮影をした「セラミック球」の中で、一番大きなセラミック球をご覧ください。1.25mmの撮影スライス厚の3次元画像ではセラミック球は球形を示してしますが(図1-a)、2.5mmでは左右に伸びた樽上の形態を示しています(図1-b)。「どうしてこのような伸びた画像になるか?」その理由は、「部分体積効果」が起こっているからです。この「部分体積効果」は、寸法誤差につながるCTで最も注意すべき現象です。

撮影スライス厚違いによるセラミック球の形状
図1:撮影スライス厚違いによるセラミック球の形状

 CT画像は1つのスライスの厚みの中で、平均化されます。下記の模式図(図2-左)をご覧ください。「実体」が1つのスライスの中で25%、50%、100%存在している場合、それらを「CT画像」で見ると1つのスライス厚の中で平均化されるために1つの画素(ピクセル)の中で占める面積は全て100%となり、一方で画像濃度は25%、50%、100%となります(図2-右)。図2-左の「実体」の中で、25%と50%の体積比率の「実体」をご覧ください。スライス厚の中で「何も存在しない部分(白い部分)」があるにもかかわらず、右の「CT画像」では真っ黒ではなく、灰色系で塗りつぶされた色を示し「実体」が存在して見えていることになります。このように部分的に実体が膨らんだ状態、すなわち部分的に体積が膨張した画像になることを「部分体積効果」と呼び、CT画像で最も注意して読影すべきポイントです。(ちなみに最下段に示すように密度が50%の場合であれば、理論的に体積50%の画像と同じ表現となります。)

 実際、1.25mmのスライス厚であろうと2.5mmのスライス厚であろうと、どちらも「部分体積効果」が起こっていますが人間の目に認知できる大きさが1.25mmではわかりにくく、2.5mmのスライス厚では明確に認識できるために2.5mmのスライス厚のCT画像の3次元像では左右に膨らんだ樽のようにセラミック球が表現されてしまったことになります。

 以上のことからインプラントを含む歯科治療では、撮影スライス厚は1mm未満の出来る限り細かい値で撮影すべきと十河は考えています。

撮影スライス厚違いによるセラミック球の形状
図2:部分体積効果を示す模式図
 
ページの先頭へ