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CTの基礎

被曝と画質の天秤

ここがポイント

薬が「効果」と「副作用」を天秤にかけて処方されるように、医療判断は常に「メリット」と「デメリット」の天秤である。 「低被曝」と「高画質」についても、同じと十河は考える。

ボトム

 下記に、前頁の「フルスキャン」と「ハーフスキャン」についての十河の私見を述べたいと思います。

 

■撮影時間とモーションアーティファクト:

 今、多くの歯科用CTに搭載されている平面検出器のFPD(Flat Panel Detector)は、X線を1秒間に処理できる能力(フレームレート, fps=frames per second )に限界があるため、1周360度で撮影した場合の撮影時間は20~30秒となります。 十河は「20~30秒であれば、患者さんがじっと我慢のできる時間ではないか!」と思っています。

 そのため、2000年代初頭の撮影時間が1分前後の歯科用CTとは異なり、この2010年代の歯科用CTの20~30秒の撮影時間は決して長いとは思いません。

 

■被曝と画質:

 十河は不要な被曝を患者さんに与えることは猛反対であり、常に少しでも低被曝を心がけることは歯科医師として当然の心構えであると思っています。 そのため、「管電圧」「管電流」「撮影時間」「撮影範囲(FOV)」からみると、歯科用CTは医科用CTに比べて被曝量が少ない点で硬組織の診断においては有用性の高い診断装置といえます。 ましてや撮影時間を半分にする「ハーフスキャン」では低被曝となるため、さらに有効と考えられます。

 しかし一方で、「しっかりと診断をすることが、CT撮影本来の目的である。」と考えると、十河は撮影時間が半分になる「ハーフスキャン」の低被曝というメリットよりも、 X線情報量が少なくなり画質が劣化した結果として診断能力が悪くなる方が「患者さんに無駄な被曝を与えているのではないか?」と思ってしまいます。

 そのため、十河は「被曝」と「画質」を天秤にかけると、「ハーフスキャンによるCT撮影よりもフルスキャンによるCT撮影の方が患者さんにとってメリットが上回っているのではないだろうか。」 と個人的に思っています。

 

■判断は先生方で:

 とはいうものの、「ハーフスキャンの画像でも臨床上問題はない!」とおっしゃる先生もいらっしゃることでしょう。

 患者さんに与える被曝のデメリットと、診断によるメリットとを天秤にかけた判断が許されているのが、ライセンスを与えられた歯科医師です。 そのため、「フルスキャンがよいか、またハーフスキャンの方がよいか?」は1人1人の先生方でご判断いただきたいと思います。

 繰り返しになりますが、歯科医師として被曝低減を常に考えるとことは重要です。 ましてや、CT装置の償却費用をまかなわんがためにCT撮影を行うことは許されず、歯科医師としての正義をまっとうしなければいけないことはいうまでもありません。

 

動かないための「4つの声がけ」

 パノラマのような立位型歯科用CTで患者さんが動いてしまいモーションアーティファクトが発生してしまったならば、 再撮影時には重心を低くして体を安定させるために座った状態でのCT撮影をお勧めします。

 また、歯科用CTの撮影前には、患者さんに①息、②唾、③噛む、④目の4つについて声がけしてください。画像のブレが変わります。 その内容を下記のようにCT撮影前の患者さんから見える場所に貼紙をしておくのもよいでしょう。

 

 CT撮影をする患者さまへ
 1)呼吸を浅く: 体が揺れますので、浅く呼吸してください。なお、息を止める必要はありません。
 2)唾を飲む: 撮影中に動かないように、唾を「ごっくん」と飲んでください。
 3)ギュッと噛む: あごが動かないように、ギュッと噛んでください。
 4)目を閉じる: CT装置の腕が回転します。目線で追わないように目を閉じてください。
 
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